ベクトル空間 V の内積はテンソル空間 V*⊗V* の元

内積の定義

ベクトル解析30講 では内積は以下のように定義された.

$R$ 上のベクトル空間を $V$ とする.写像 $\langle \cdot, \cdot \rangle : V \times V \to R$ が次の性質を持つとき,この写像を $V$ の内積という.

$$ \begin{aligned} &1. \quad \langle \boldsymbol{x}, \boldsymbol{x} \rangle \ge 0 \quad \text{(等号条件 $\boldsymbol{x} = \boldsymbol{0}$)} \cr &2. \quad \langle \alpha \boldsymbol x + \beta \boldsymbol x^\prime , y \rangle = \alpha \langle \boldsymbol x , \boldsymbol y \rangle + \beta \langle \boldsymbol x^\prime, \boldsymbol y \rangle \cr &3. \quad \langle \boldsymbol x, \boldsymbol y \rangle = \langle \boldsymbol y, \boldsymbol x \rangle \end{aligned} $$

内積をテンソル積で表現

以降,ベクトル空間 $V$ は $N$ 次元とし,基底 $e_1, \dots, e_n$ をとる.

ベクトル解析30講 では,基底どうしの内積の値を

$$ \langle \bm e_i, \bm e_j \rangle = g_{ij} $$

としていた,この $g_{ij}$ はベクトル $e_i, e_j$ の内積から求まる実数だが,双対空間のテンソル空間 $V^\ast \otimes V^\ast$ の元の $e^i \otimes e^j$ の係数として見てやると,内積をテンソル空間 $V^\ast \otimes V^\ast$ 上の点と見ることもできる.

内積 $\langle \cdot, \cdot \rangle$ を $b$ を用いて表すことにする.

$$ b(\bm x, \bm y) = \langle \bm x, \bm y \rangle $$

内積の定義 より,$b$ は $V$ 上の双線形関数なので,$b \in L_2(V)$.

$L_2(V) \simeq V^\ast \otimes V^\ast$ より $b$ は $V^\ast \otimes V^\ast$ の元.

このことから,$b$ は $$ b = \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N a_{ij} e^i \otimes e^j \quad \text{($a_{ij} は実数$)} $$ の形となるから各$i, j$ での実数 $a_{ij}$ の値が求まればよい.

$a_{ij}$ の値は $b( e_i, e_j ) = g_{ij}$ と $$ \begin{align*} b( e_k, e_l ) &= \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N a_{ij} e^i \otimes e^j (e_k, e_l) \\ &= \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N a_{ij} e^i (e_k) e^j (e_l) \\ &= a_{kl} e^k (e_k) e^l (e_l) \\ &= a_{kl} \end{align*} $$ より,$a_{kl} = g_{kl}$ となる.

よって 内積 $b$ は

$$ b = \sum_{i=1}^N \sum_{j=1}^N g_{ij} e^i \otimes e^j $$

と表すことができ,これは,テンソル空間 $V^\ast \otimes V^\ast$ 上の点である.

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